2011/07/09

何が一番嬉しいって?・・。

 ~『講師冥利』に尽きる感激~
 誰が付けたか「講師稼業」という名称が抵抗もなく独り歩きしている。
 40年近く続いた現職を辞してから丸七年が過ぎた。講師として「講演」した回数も多い年は100回も超えた。ただ今でも信じられないのが、回数の増減は別としても未だに出講要請が続いているという現象である。今夏も、6月末の3日間滞在の鳥取市から帰宅して2日間の休憩後、今回の高知市(4日間滞在)への出講という頗るハードな日程の講師稼業となった。わが身ながらタフネスを実感している。訪問した四国でも丁度梅雨明けした日でもあり、気温の上昇は老体には流石に身に堪えるものもあった。しかし、帰宅後の笑い話でどんな旅であったかご想像願いたい。体重測定をして愕然としたのは、それでも体重が減っていないことである。傍らの老妻に、「楽な仕事をして、やっぱりご馳走ばかり食べてるんですよ・・」と羨望の意を含めて畳み掛けられて啞然としながらも苦笑してしまった。
 教員生活が長かったので「指導助言」スタイルは麻痺するほど慣れてしまっている。
 子供たちは成長の兆しが表出するので遣り甲斐もあったのは事実である。講師稼業になるとその喜びは半減以下である。なぜならば、指導助言の相手が「オトナ」集団だからである。成長期を過ぎたオトナ集団には多くの成長を期待すること自体が己を見ても明白であるからだ。
 しかし、また講師稼業の「指導助言」は教員時代とは格段の違いもある。
 小生の講師による指導助言の哲学は、「こうしなさい」「こうすべきだ」では効果は無いと言う考え方に準拠している。ただ、最初の一歩だけは「方向性」としてその学校の意向に沿うような実例を示すことにしている。そして、経験値を実例として話題提供をしたり、先進的な研究が進められている学校の様子を紹介したりしながら大きな流れができるように配慮をしている。つまり、その方向性や研究の進め方は講師の話題提供を受け止めての、当事者意識を期待するだけなのである。従って学校によっては何年間の通いでも「教わった通り」での校内研究に終始してしまい、オリジナルな進展は感じ取れないままに訪問が終了したこともある。年間に数回しか訪問できない現実を考えると、「その学校での工夫」に頼るだけになるのは仕方がないことでもある。
 そこに今回の訪問である。衝撃と感動の二重奏に悩殺される訪問であった。
 訪問校の高知市立一宮(いっく)小学校にはもう5年間継続して訪問指導をしていることになる。グループ別に研究が始まり、1年前には見なかった光景が目に飛び込んできた。慌てて校長室に戻ってカメラを持ってきた。そして撮影(=写真)しながら一宮小学校なりの工夫がレンズから飛び込んできて、目を見張ってしまった。そして、その究め方に「進化」を実感した。「これだ!!」と声に出してしまいそうな興奮となった。進化するオトナ集団を認知できた喜びこそが講師冥利である。通常は学校訪問の夜が懇親会であるのに今回は前夜祭(?)で懇親を済ませていたので、研究の進化を評価する時間が取れなかった。しかし、この学校の教師集団の勢いは『進化する』究め方を追求している現状として歓喜の写真撮影となった。焦点化した「児童の観察」は当初に指導をしている。そこから、教師集団の工夫と実践から、「折れ線グラフ」での表現は、まさにオリジナリティである。観察対象の児童一人一人の集中度と感情表現を折れ線にして、遠くからも読み取れる工夫には感服してしまった。
 何が一番嬉しいって?講師としては「オトナ集団の進化」と遭遇することではないだろうか。
 そんな喜びが、今回は、長期滞在に拘わらず疲労感も残さずに遠路(電車片道8時間の旅)の移動にも堪えられたのかもしれない。頑張っている教師集団に乾杯だ!!
 次回の訪問がまた、楽しみになっている講師バカである。

 今日は孫の小学校での授業参観に行って来ました。講師ではございません。一人の祖父として孫たちを見詰めてまいりました。不思議な感情が脳裏を横走りするのに苦笑しました。関東も梅雨明けだそうです。汗だくになりながら授業を受けている孫たちに溺愛心を感じました(笑)。

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自己紹介

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1944年熊本県八代市生まれ。1968年から神奈川県内の高校、中学校の英語教員として勤務。1988年より神奈川県茅ヶ崎市で指導主事、教育研究所長、中学校教頭、指導課長、小学校校長、指導担当参事を務める。1996年8月ちがさき教育実践ゼミナール『響の会』(現・教育実践『響の会』))を開設し、教員の自主研修会として活動を主宰。 2001年に新設開校の茅ヶ崎市立緑が浜小学校・初代校長着任。 2004年3月退職後は「教育実践・響の会」会長として全国で講演活動中。『響の会』は茅ヶ崎市・浜松市・広島市・東京都立川市に開設。2006年9月より2011年8月まで、日本公文教育研究会子育て支援センター顧問として全国で指導助言に務める。著書に 『あせらない あわてない あきらめない』(教育出版)、『人は人によりて人になる』(MOKU出版)、『小学校英語活動教本JUNIOR COLUMBUS』(光村図書出版)がある。その他月刊誌等の執筆原稿や共同執筆書も多数あり。近刊は、2012年10月発行予定(『校長先生が困ったとき開く本』教育開発研究所)。

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