~今後の学校経営への提言~
業界では「地域と学校」は、様々の視点・観点から、「その関連性」について論じられている。
小生も経営者だった過去の実績(?)を顧みても反省だらけの経営領域である。「地域を巻き込んだ」とか「地域教育力を活かした」、あるいは「地域への発信」等々と挙げたら枚挙にいとまがない。それほど「言語表現優先」で実効性も感じることなく、「校長が替われば学校は変わる」と括られてしまう。その都度、落胆しながらも地域の未来を憂いつつ鞭を打って学校教育への関わりに積極性を発揮していただく地域が多いことを(元・関係者だからこそ)実感として受け止めるのである。そして、省みつつ償いの真似事でもできればとの思いは深まるばかりであった。
上掲したパンフレットは地域に配布されたものである。
「走る書斎(=移動に利用する新幹線車中)」で脳裏を刺激されたのが、太い枠で囲んである部分の主催者の「思い・願い」のメッセージであった。読者の皆さんの熟読を期待したい。この会は、中学校1校と4つの小学校が一体となって「子どもを非行からまもる」運動を9年前に立ち上げられたようである。10年ひと昔、と言うとすれば「昔の時代」に先代の皆さんの苦慮の末に産み落とされた会であっただろうと推測できる。
僅かなスペースの少量の文章ではあるが、「地域住民」の「地域の子供たちの未来」を思う気持ちが痛いほど伝わってきたのは小生だけだろうか?・・・いつか来た道を子どもたちが立派に歩むためにも、世代のバトンタッチを誠実に行えるようにしなければならないと思います。・・・この哲学が、この地域に確かな命として潜在しているとすれば、学校教育関係者が黙って見過ごしているようでは職務怠慢でしょう。飛ぶように消え去る車窓の景色を見ると重圧感も一緒に飛んで行ってしまう。しかし、走る書斎では、この熱いメッセージを発する地域への「お返し」をするために老脳にも熱い血液が循環してきたのを体感しながら「未だ見ぬ聴衆」を想定して講演の構想を再考した。
350人ほどの参加者だっただろうか?定員が500名の鳥取環境大学の素晴らしい講堂は演壇から対峙するには眩しいほどの熱気も伝わってきた。講演のでき具合は問うて欲しくない(笑)が、走る書斎で編み出した「地域の皆さんへの」お返しは、最後の締めくくりで言及できただけでも重責のホンの一部分の責めを果たせたのではないかと、今朝になっても「興奮冷めやらず」の心境にあっても感じられることが講師冥利である。
昨年も約100回の講演を熟してはいるが、今回のように「助言や提言」の類でまとめた講演は一回もない。主催者の思いがそれほどまでに伝わってきたという証である。書面での公表はしないが、会場でメモを取る関係者を確認できたことは至福でった。
一方で、学校関係者の熱意も十分に受け止めることができた。勤務を要しない日に、特別な個人的事情が無い限り全教職員の出席を講じている学校も珍しい。応じた教職員にも敬意を表する。2日間日程のスケジュールは、初日は「授業研究会」であった。150人弱の小中学校の「せんせい」諸兄が集い、4つの提案授業とそれに伴う4つの分科会での協議も圧巻であった。同業者のよしみで、かなり辛口の講評をしたのは正解だったと、翌日の本講演会場で実感した。授業で「非行からまもる」術を追究するのが授業研究会であるというのは、ある雑誌に掲載された小生の原稿、「授業こそが積極的な生徒指導だ」という内容を、今回は小中学校の先生合同の協議会で伝えることが出来たのは何よりの充足感である。4名の中学校教員の提案授業も立派だった。個々の授業者を校長室で「個別指導」の時間も特設されたことは管理職の教師への深い愛情と理解できた。かなり厳しい評価を発することが出来たのは管理職な確かなフォローができると確信できたからでもある。
最後に、関係各位と、ご参会の地域の皆様に心より感謝していることをお伝えしたい。そして、同業者の後輩諸兄には地域のために、子供たちの未来のために実りの多い授業を展開して行こうではないか、とエールを送って今回の「旅の報告」といたしましょう。
歩禅とは、『安岡正篤 人生を拓く』(神渡良平 著 講談社+α新書)で拾った言霊です。千葉県で早朝ウォーキングを長年実践しておられる方の言葉として紹介されていました。沈思黙考の「坐禅」に呼応するものだそうです。ふと読み留まったのは我が愚脳にも大きな電撃が走ったからなのです。歩きながら自然界に身を委ね、自然界に畏敬の念を抱き、そして自然界に語りかけることのできる自分を見いだすこと。これを「歩禅」と利己的に理解しました。坐禅が苦手な私には「静かに座して己と語る」ことに替わるべく言葉として受容できる気になったのです。だから私には単なる言葉としてではなく、『言霊』(ことだま)となったのです。 平成16(2004)年10月20日 還暦に記す ~以降「散歩日記」を歩禅記として継続発信中~
自己紹介
- 角田明
- 1944年熊本県八代市生まれ。1968年から神奈川県内の高校、中学校の英語教員として勤務。1988年より神奈川県茅ヶ崎市で指導主事、教育研究所長、中学校教頭、指導課長、小学校校長、指導担当参事を務める。1996年8月ちがさき教育実践ゼミナール『響の会』(現・教育実践『響の会』))を開設し、教員の自主研修会として活動を主宰。 2001年に新設開校の茅ヶ崎市立緑が浜小学校・初代校長着任。 2004年3月退職後は「教育実践・響の会」会長として全国で講演活動中。『響の会』は茅ヶ崎市・浜松市・広島市・東京都立川市に開設。2006年9月より2011年8月まで、日本公文教育研究会子育て支援センター顧問として全国で指導助言に務める。著書に 『あせらない あわてない あきらめない』(教育出版)、『人は人によりて人になる』(MOKU出版)、『小学校英語活動教本JUNIOR COLUMBUS』(光村図書出版)がある。その他月刊誌等の執筆原稿や共同執筆書も多数あり。近刊は、2012年10月発行予定(『校長先生が困ったとき開く本』教育開発研究所)。
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