そんなことがあるわけないでしょ!
亡母は文字の読み書きが十分ではありませんでした。少年時代に、その母が「トンビがタカを産みました」と、周囲の人たちに向かっては、いつも笑いながら言っていました。意味がわからないままで成長していました。辞書で調べても載っていません。いつの間にか忘れていました。きっと故郷だけで使われていた一種の放言だったのでしょうか。亡母の言おうとしていた意味は理解していました。
この選手のご両親がある時、小生と一緒に取材を受けているところで、同じような意味合いの応えをされました。忘れかけていた言葉を思い出しました。大活躍をし始めたばかりの頃のことでした。どんな世界でもサラブレッドという二世、三世が存在しますが彼は野球界とは全く無縁なご両親の次男坊です。彼は、中学生時代の3年間をどっぷりと小生の指導の下で過ごしました。他の二人の兄弟とも同じ中学校で指導をしました。特に弟は同じ野球部の部員としても関わりました。その関係からご一家との新密度も高いものがありました。先年、「期待をしておられたお父さん」が亡くなられました。本人が「父が会いたがっています」と遠征先から電話で知らせてくれました。病床で「先生、ありがとう」の連発でした。死期をご存知だったかのように「この子は先生と会っていなければ・・」とまで言いながら涙を流されました。それが最後の対面でした。
鳶は鷹を産まないでしょうが、親から見ても「手の届かない世界で大活躍する」わが子をみると、そんな表現も口をついて出るのが嬉しい誤算の親心なんでしょうね。関わって卒業した生徒に関しても同様な感情に浸るのを「教師冥利」と言うものでしょう。
スポーツ記者にはインタビューで必ず訊かれます。「ここまでの活躍が予測できましたか」と。小生にとっては「いいえ」としか答えられないのです。だから、日本プロ野球界での記録ホルダーとして成長し続ける卒業生が眩しく見えます。
彼の新著「悪あがき」に小生のことを書いていました。読みながら「知らないはず」の事象も卒業生は知っているのか、と「知らぬは先生ばかりなり」の心境に落ちこんでしまいました(笑)。
色々な分野で卒業生たちは頑張っています。彼らの頑張りは、当時の「せんせい」に大きな刺激を与えます。今日は身勝手な嬉しいお話のお裾分けになりました。
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