全国各地での講演と地元での講演とはこんなところが大きく違うのか!
しみじみと実感した時間となった。30年前に勤務した中学校区にある講演会場である。会場は日本公文教育研究会・藤沢事務局管内の教室。会場周辺には大きな様変わりもあったが、そこかしこに「家庭訪問」で歩き回った時の名残は健在していた。あの時代と同じように少々道を間違えたことも懐かしさが倍増したのかも知れないが、実は、それは比ではなかった。
開始前に、「先生、覚えていますか?」と教室のスタッフとして勤務しているという女性から声が掛かった。「***かい?」咄嗟に名前が出た。中学生時代の少女の顔が浮かんだからである。素直な笑顔とはにかんだ仕草は昔のままだった。優しい性格の彼女にはこの教室での「支援活動」は適役だろうと思った。二人のお子さんの母親だと言う。
もっと驚いた。会場入り口に座りかけた女性。中学時代に担任した記憶がその動きから蘇ってきた。まさか!目を凝らして見つめ合ってしまった。お母さんらしい仕草は感じたが、目が潤んだままで言葉を発しないその女性に向かって、居たたまれずに小生から声を掛けた。「**ちゃんだよね・・」と。「はい」と相変わらず静かな応え方だった。彼女も二人の子どもの母親として、この教室に子どもを通わせているとの説明が教室の指導者より聞き出すことが出来た。彼女は当時中学校2年生。2年9組という学級で担任だった小生のクラスの一員であった。海外研修の出張先(イタリア)に届いた「学級からの手紙」に書いていた彼女の文字が浮かんできた。涙ぐんで座ったままの**ちゃんは、当時の**ちゃんのままだった。嬉しい再会を仕組んで(?)いただいた指導者の心意気に感激してしまった。
もう一人会場には参加していた。彼女は、1年前に市内の中学校で出会っている。保護者会の役員としてのその後も頻繁に接触している。この会場から目と鼻の先に実家がある。担任ではなかったが骨折した彼女を車で送迎したことがあるらしい(笑)。多くの生徒の世話をしていたので個々の対応は細かに覚えてはいないのだが、再会して彼女から説明を受けたら「そういうこともあった」と朧気な記憶が浮かんできた。事実のようだ。役員をしている中学校の保護者会同志が一緒にこの講演会にも出席してくれたようである。
会場の主宰者(教室の指導者」から帰り際に「お土産」を頂戴した。
自宅に帰って妻に「先生から貴方に」と頂いて来たよ、と手渡した。妻が開いて歓声が揚げた。「一足早い鯉のぼり」ね、と。雨模様の寒い気温が続くので「五月晴れ」に泳ぐ鯉のぼりの季節を忘れていた。読者の皆さんにも「一足早い鯉のぼり」の晴れやかな気分のお裾分けです。写真でご堪能下さい。
教師冥利とはこんなこと。30年ばかり前のあの日の未熟な教員には目映いぐらいに成長した「お母さん達」との再会だった。中・高生の親として奮闘中の母親達。今までの「子育て」とは趣を異にするが、「もう一頑張り」してもらいましょう。わが子が立派な社会人となるまで「もう一息頑張るんだぞ!」と心の中でエールを贈りながら充実した時間に終止符を打った。今日も教師冥利を満喫できた「感謝」の一日であった。
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