2011/06/17

時代も「やっと変わる」兆しを感じて・・

 ~「理不尽な」という形容表現~
 飼い慣らされた?いや、諦めに近い心境に追い込まれて?
 小生が学校教育畑の人間であるので、思考回路が少々狭まった視野から考えを述べることを最初にお断りしておきましょう。所詮、キミも単なる教員だったのか!?と責められることも考慮に入れながら、次のような「新聞記事」提示します。

「息子に体罰」中学校を恐喝未遂、母らに逮捕状
 長男が通う福岡市立中学校にクレームをつけ、金を脅し取ろうとしたとして、福岡県警は市内に住む母親(46)と知人の男(29)について恐喝未遂の疑いで逮捕状を取った。男は所在が分からなくなっており、県警は見つけ次第、2人を逮捕する方針。捜査関係者への取材で分かった。学校が今年3月、被害届を提出していた。市教委によると、学校に不当な要求をするモンスターペアレントの例は増えているが、学校側が被害届を出して、警察が立件するのは異例という。

 ここまで来てしまったのか。
 この記事に目を通した瞬間の感想はこうだった。歴史と表現すると烏滸がましいが、現役校長時代の歴史的1ページ(光景)が浮かんできた。「理不尽な要求」を突きつける校長室での両親の訴えを、苦慮しながら聞いたあの日が鮮明に蘇ってきたのである。我が教員人生における「小さくて大きな歴史的事実」であると言っても過言ではあるまい。
 あの両親は今は?その子どもは今は、もう大学生か?
 歴史という時間は決して止まらない、瞬時の立ち止まりもない。その子どももあっという間に、当時の親の年齢に達してしまう。「負の再生産」が展開しないことを祈りつつ、無能は校長職を終えた。小生にとっては唯一の苦い経験であり、消化不良のイヤな思い出でもある。学校自体の対処法が社会の急変に着いていけなかった時代であったのかも知れない。
 それよりも以前に、担任教員時代にも珍現象(と、自身は思った)が学級担任を襲ってきた。
 それが「不登校の児童・生徒出現」である。当初、学校は対応に戸惑った。その時点での究極の助言は、「大人が考えを押し付けるより、まず当事者の心を開くように、じっと聞いてあげること」であった。不本意に思いつつも教員は懸命に助言を守って頑張った。事態は全く好転せずに徒に歴史だけは事象として刻みながら「不登校」現象は増加の一途を辿ってしまった。振り返れば、不登校減少が「社会に認知され」、表面上の温もり(=聞いてあげるだけ)で処理されて、学校教育の外に出てしまったら(卒業)誰からも声が掛からずそのまま放置されてしまったではないか。40歳になっても「引きこもり」の現実を見聞きするたびに、あの頃のあの中学生を思い出して心が痛む。丁度その年代である。前述の理不尽な親も同じ年代であると考えればゾッとする。
 どんなに理不尽な要求でも、学校は「ただ聞くだけ」の対処方法は、不登校児童生徒の出現時に学んだことに追随していた。腸が煮えくり返るほどの要求でも学校は耐えながら聞き入れることに全力投球をさせられた。その結果は?エスカレート現象になることぐらい百も承知である。しかし、学校には特殊な「時間枠」がある。中学校には3年間したら卒業して、居なくなるという時間枠である。嵐が吹きまくっても、「制限年数が過ぎれば」嵐の存在感も消えてしまう。つまり、じっと我慢していれば嵐は自然消滅するわけである。そんな苦しい時間を耐えた分だけ「世の中」が変わってくれたら溜飲が下がる思いでいた。しかし、この現象もエスカレータ式症候群と化し、「言い得」「ゴネ得」となってしまい、家庭教育のツケが学校教育に被せられてにっちもさっちも行かない状況下に至ってしまったようだ。
 この記事を見て、「時代の流れ」を痛感しつつ、後輩諸氏の苦労ぶりに先輩として何ら役立つこともなく退職後ものうのうと生きている自分が情けなくなってしまった。
 このブログでは原因への言及もできないが、戦後教育の大きな責任をしみじみと振り返っている朝である。

 

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自己紹介

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1944年熊本県八代市生まれ。1968年から神奈川県内の高校、中学校の英語教員として勤務。1988年より神奈川県茅ヶ崎市で指導主事、教育研究所長、中学校教頭、指導課長、小学校校長、指導担当参事を務める。1996年8月ちがさき教育実践ゼミナール『響の会』(現・教育実践『響の会』))を開設し、教員の自主研修会として活動を主宰。 2001年に新設開校の茅ヶ崎市立緑が浜小学校・初代校長着任。 2004年3月退職後は「教育実践・響の会」会長として全国で講演活動中。『響の会』は茅ヶ崎市・浜松市・広島市・東京都立川市に開設。2006年9月より2011年8月まで、日本公文教育研究会子育て支援センター顧問として全国で指導助言に務める。著書に 『あせらない あわてない あきらめない』(教育出版)、『人は人によりて人になる』(MOKU出版)、『小学校英語活動教本JUNIOR COLUMBUS』(光村図書出版)がある。その他月刊誌等の執筆原稿や共同執筆書も多数あり。近刊は、2012年10月発行予定(『校長先生が困ったとき開く本』教育開発研究所)。

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