2012/06/19

『辛口尽言』(15日ブログ・続編)

~引き金は、やっぱり「子ども」~
 去る14日に愛知県豊橋市の小学校を訪問した。要請の内容が「授業後の指導助言」であるのは定番である。日替わりで全国を会場として「授業観察」をする目には、時として助言の言葉を選べない授業と遭遇する。それは「子どもへの愛情の無い」授業を観察した時である。
 『遭遇』とは、広辞苑では「思わぬ場面であうこと。不意にであうこと。「困難に遭遇する」が例示されている。
 全国の教室に入り込んで観察する小生の業務は、まさに「遭遇する」ことへの必然性の下で展開されるのである。授業者との遭遇もさることながら、その教室にいる「一人の子ども」ともその現象に入り込むことが意外と多い。
 この日の授業者は、始発点は小学校の教員でありながら、7年間の中学校教育界に武者修行に行って戻って来たという男性教員だった。教師の愛情の蚊帳の外に居るTくんと目が遭ってしまった。算数の問題を解きながら担任の先生の指示に懸命に答えようとしているTくんの姿勢に感動した。授業は指導案を追いながらどんどん展開する。Tくんの答えは途中で止まった。授業者のペース配分についていけなくなったのである。不意に出会ってしまったTくんと小生は勝手な世界を創ってしまった。
 授業が終わって挨拶が済んだ。教室を離れる小生はTくんに小さく手を振った。一回目は僅かに手を振ってくれたような気がした。二度目を振ったら振り返しくれた。三回目は、僅かな微笑みも添えてハッキリと手を振ってくれた。
 授業の指導講評は、小生の自然体(=辛口指導)での表現で始まった。それは、今回の授業者にはホンモノになれる教師としての資質を感じ取っていたからである。かなり、厳しい指導になったらしい(笑)。同席した同僚教員には授業者への同情心も多かったに違いない。そんな雰囲気を分かりつつも、この場で指摘しなければこの有能な教師には伸びるチャンスを失してしまうと思い込んだ講師としては「躊躇うことを忘れた」暴走ぶりとなったのかも知れない。
 その授業者から昨夕、メールが届いた。

120618受信
角田様     先日はありがとうございました。先生にズバッと言われたことが大変身にしみました。お話ししたとおり,4月より2か月半,なかなか子どもたちをとらえることができないなあと悩んできたことを,見透かされたように言われて目が覚める思いでした。子どもと共有する時間をもっととるように心がけ,その中からいいことを見つけて,もっともっと褒めていきたいと思い,新たな気持ちで頑張っています。話しは変わりますが,先生と時間を共有したTくん。彼に次の日に話しました。「知らないおじさんだったけど,なんだか楽しかった」と言っており,手を振ったこともうれしそうに話してくれました。10月にまたお会いできるのを楽しみにしています。そのときには,ゆっくりとお酒も飲みましょう。         

 読み終わって数日間の胸の閊えが消え去るのを自覚した。これだからこの稼業が止められない(笑)。退職して8年間、飽きもせずに全国の教室に足を運んでいるのが他人から見れば単なる「もの好き」と片づけられることになるかも知れないが、これも『一つの人生』であることだけは断言できる。「もう辞めようかな」と思う時に限ってこんな遭遇が待ち構えている。これも「不思議な一つの人生」と感じることも嘘ではない。
 指導を受けた先生たちの多くから「元気を貰えた」と謝意を表現されることが多い。
 何を隠そうか。元気がもらえるのはこういう反応を貰える稼業に没頭する小生自身なのであることは事実である(謝=感謝)。その恩返しは10月の再訪から始まることを忘れてはなるまい。

0 件のコメント:

コメントを投稿

自己紹介

自分の写真
1944年熊本県八代市生まれ。1968年から神奈川県内の高校、中学校の英語教員として勤務。1988年より神奈川県茅ヶ崎市で指導主事、教育研究所長、中学校教頭、指導課長、小学校校長、指導担当参事を務める。1996年8月ちがさき教育実践ゼミナール『響の会』(現・教育実践『響の会』))を開設し、教員の自主研修会として活動を主宰。 2001年に新設開校の茅ヶ崎市立緑が浜小学校・初代校長着任。 2004年3月退職後は「教育実践・響の会」会長として全国で講演活動中。『響の会』は茅ヶ崎市・浜松市・広島市・東京都立川市に開設。2006年9月より2011年8月まで、日本公文教育研究会子育て支援センター顧問として全国で指導助言に務める。著書に 『あせらない あわてない あきらめない』(教育出版)、『人は人によりて人になる』(MOKU出版)、『小学校英語活動教本JUNIOR COLUMBUS』(光村図書出版)がある。その他月刊誌等の執筆原稿や共同執筆書も多数あり。近刊は、2012年10月発行予定(『校長先生が困ったとき開く本』教育開発研究所)。

フォロワー