2012/10/26

「時機の早晩」を考える

これは広島の小学校でご案内戴いた場で偶然出会った坂村真民氏の直筆書です。2009/07/02 撮影(本人)
 
 ~「二度とない人生」と言うが・・・~

 大物政治家の現職辞職のニュースが飛び込んできた。夕暮れのTV番組でちょっと覗きたい番組があってスイッチを入れた瞬間だった。思考回路(老脳)を過ったのは「時機の早晩」というキーワードであった。

 実は、お目当ての娯楽番組とは日本プロ野球のドラフト会議の中継であった。昨年のこの日に下された球団の交渉権を拒んで1年間を過ごした選手への、主体である12球団の次の手立てを確認したかったからである。その瞬間をライブで見たいと言う単なる野次馬根性だった。少々恥ずかしい思いもしながらも結果を確認することが出来た。結果自体への批判中傷は全くない。

 そこで二人の「人物」についてふと、愛読書の内容を思い出した。

 『人生二度なし…』と論じる森信三氏と、『念ずれば花開く』と述べる坂村真民氏である。80歳の大物政治家には『人生二度なし…』を、そして23歳のプロ野球選手になる青年には『念ずれば花開く』という書物を当てはめて思いを巡らせた。

年齢差では単純に『時機の早晩』等の比較は出来ない。ましてや、活躍分野も全く違うからでもある。しかし、小生にとっては十分に比較できる領域が存在する。それは「二度とない人生だから」という理念の土俵である。

年齢も「考え方」によってどうにでも曲解できる。

80歳。人生の残りの日々を単純計算しても、「今さら・・・」と矛先を収めてしまうだろう。そして周囲の多くの人は納得する。しかし、「二度とない人生だから」の理念で追及すれば、残された人生を悔いの無いモノにするために「できること」にチャレンジすることは、また多くの人の関心を集めても押し止めることはするまい。

23歳の青年にとって、1年間の待機時間は人生の何年分に相当したと考えるのだろうか。システムだから仕方が無い。「勝手に待ったんだから」との発言は厳し過ぎないだろうか。機構やその組織についての是非論はこの場には似合わない。この青年には『念ずれば花開く』という信念で、これからのプロ野球人生で「花が咲いて」くれることを祈るばかりである。

早朝歩禅で出会った老紳士が後輩の我々夫婦に、「どんなに生きても、あと10年の保障は無い。無理のない生活を楽しく過ごすんですよ」とアドバイスを戴いた。その後も歩きながら夫婦の会話も、「あと10年の命の保障は無いかぁ~」で一致した(笑)。二度とない人生を、人それぞれが人それぞれの道を歩んでいる。

森信三氏は著書で読者である教師に向かって言い続けられた。
・・・・・教育とは流れる水に文字を書くようなはかない仕事なのです。しかし、それをあたかも岸壁にのみで刻み付けるほどの真剣さで取り組まなければなりません。教師がおのれ自身、あかあかと生命の火を燃やさずにいて、どうして生徒の心に点火できますか。教育とはそれほどに厳粛で崇高な仕事なのです。民族の文化と魂を受け継ぎ、伝えていく大事業なのです・・・・・

 80歳にして新たな挑戦を志す政治家、これから日本のプロ野球で大輪の花を咲かせ国民に夢と勇気を与え得るスポーツマンにも、この本文の「教師・教育」という言葉をその世界の言葉と入れ替えても不自然ではない。ここが森信三氏を尊敬する所以である。

 「二度とない人生だから」、と詠う詩人・坂村真民氏の詩行にも、同様に二人に贈る温かい励ましの言葉が多く詠われている。茨の道を切り開かれんことを祈る!
 
歩禅の記録 【08:25~09:35 7100歩】
初めてのコースを歩いたので道に迷ってしまいました。(笑)

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自己紹介

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1944年熊本県八代市生まれ。1968年から神奈川県内の高校、中学校の英語教員として勤務。1988年より神奈川県茅ヶ崎市で指導主事、教育研究所長、中学校教頭、指導課長、小学校校長、指導担当参事を務める。1996年8月ちがさき教育実践ゼミナール『響の会』(現・教育実践『響の会』))を開設し、教員の自主研修会として活動を主宰。 2001年に新設開校の茅ヶ崎市立緑が浜小学校・初代校長着任。 2004年3月退職後は「教育実践・響の会」会長として全国で講演活動中。『響の会』は茅ヶ崎市・浜松市・広島市・東京都立川市に開設。2006年9月より2011年8月まで、日本公文教育研究会子育て支援センター顧問として全国で指導助言に務める。著書に 『あせらない あわてない あきらめない』(教育出版)、『人は人によりて人になる』(MOKU出版)、『小学校英語活動教本JUNIOR COLUMBUS』(光村図書出版)がある。その他月刊誌等の執筆原稿や共同執筆書も多数あり。近刊は、2012年10月発行予定(『校長先生が困ったとき開く本』教育開発研究所)。

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