タイムマシン(=H.G.ウェルズのSFに由来する語)とは、時間の流れを越えて過去や未来に旅行するための架空の機械 【広辞苑】
低気圧の関係で夕方頃には降雪の予報も出ていた。先方(=小生はお会いしたことが無い同年齢の男性)との日程調整で訪問日の設定が為されているので行動に移すしかない。完全防備の服装で(笑)、指定時刻の電車で訪問先(常磐線・勝田駅)に向かった。 時刻表では50分間の移動時間であったが、老夫婦のミニ旅行の時間はあっという間であった。
改札駅を出たら電話をすることになっていた。エレベーターで下りる。目の前に待ち人らしい男性は見当たらなかった。再度の携帯電話で交信すると、確かにエレベーターの前に、白い杖を持った老人男性がいる。老妻が見過ごすほどの変貌ぶりだったのだろう。携帯電話を耳に当てながらエレベーターの出口を見詰める老人(失敬!)が佇んでいた。正面に向き合って見て本人同士が分かり合った。
どのような縁戚関係にあるのかも正確には老妻にもわからないらしい。実母の養父になるのが面会に来た伯母さまの父親のようである。確かな身元調査など不要ではあるが、実母が存命の折りから「近くに引っ越して行かれた(九州から)ので面会に行って欲しい」との要望があったようだ。その願望も実母が他界してから7年も経ての実現だったことになる。
若い時代の相手を思い浮かべて、駅頭までマイカーでの迎えがあると老妻は思い込んでエレベーターを降りたのだろう。視線の先は駐車場だったことも頷けた。小生は初対面であるので何が何だかわからない状況下にあった。白い杖を頼りに移動する現状までは老妻も想定できていなかったようだ。
タクシーに乗って、伯母(と、老妻は呼んでいる)が入所している「介護付有料老人ホーム」に案内された。伯母さまは92歳だと自らの自己紹介で分かった。老妻を名前で呼んで、昔話に登場する少女時代の老妻の話に花が咲いた。転倒して車いすの生活になられたこともしっかりとした記憶で説かれ、話が途切れる間もないほどだった。駅頭まで迎えに来てくれた男性が妻を10月に亡くしたばかりであったことは喪中の葉書でわかっていた。
妻の位牌にお参りして欲しいと懇願され、タクシーで自宅を経由して勝田駅に戻ることになった。老人ホームの伯母さまとは老妻は再会を誓っていた。独り住まいになってしまった(ご長男一家は神奈川県川崎市に住んでいるという)家でお参りを済ませてから帰路に着いた。
92歳の脳裏には妻の少女時代は鮮明に記憶されていた。飽きもせずに何回も同じことを繰り返しながらもその都度新鮮な表情で語れる症状が、いつかは訪れる我々の現実だと再認識してしまった。
タイムマシンは、どうやら「未来へも」移動できるらしい。未だ見ぬ未来の世界も覗いて見たくなった、と言えば童心過ぎるだろうか!(笑)
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