~往復歩禅の「初詣」は今は昔~
拙宅から最も近い駅が徒歩10分ばかりにあるJR相模線「香川駅」である。
そこまで歩いて、目的地である寒川神社の下車駅「宮山駅」まで乗る。下車して徒歩5分もかからずに神社の正面に出る。箱根駅伝復路の走者が、芦ノ湖をスタートした時点で我々老夫婦も家を出たのは、帰宅する時間を、トップランナーが茅ヶ崎海岸を通過する頃と合わせるためであった。
以前(と言ってももう10年以上前)は、自宅からこの神社までの初詣を往復とも歩いた。いや、歩けた。いやいや歩きたかった。しかし、今は?歩きたいけど少々無理であると怯え腰であるのが現実でもある。神社に詣でてからは、至近距離の駅に戻らず、町の中央郵便局で返信用の年賀状を購入しながら「寒川駅」まで戻ってきた。タイミング良く、少ない待ち時間で電車が来ることが分かり、「歩かないで」電車を使うことになってしまった。(復路だけでも歩くつもり・・・だった)
無理はすまい。
そんな言い聞かせをしながら僅か1駅区間の車中から景色を眺めつつ帰ってきた。歩数にして8000歩である。少々物足りなさも感じないわけではないが、妻にはこれが限界に見えたので妥当な企画だったと記しておこう(笑)。
計画通り。
帰宅後のテレビ画面に箱根駅伝・復路「平塚中継所」が映し出されていた。暫くの間、茅ヶ崎のカメラポイントから全国中継である。烏帽子岩も画面で見るとひと味違う風景として目に飛び込んできた。暫く応援(?)しながら、購入してきた年賀状に返信の準備をした。全部書き上げるまでには結構、時間が掛かるモノである。
異常なほどの接戦に驚きつつ、駅伝界で勝ち抜くにも伝統だけでは対応できないことを痛感する。書き終えた年賀状を持参して、今度は「独り歩禅」。団地内の郵便局まで投函するために歩いた。
裏に住むご主人と玄関先でバッタリ。肩を並べて途中まで一緒に歩いた。投函して電気量販店に立ち寄ってプリンターのインクを購入して帰宅。歩数計は13000を示している。久し振りに「歩いたぁ~」と実感する。
歩禅とは、『安岡正篤 人生を拓く』(神渡良平 著 講談社+α新書)で拾った言霊です。千葉県で早朝ウォーキングを長年実践しておられる方の言葉として紹介されていました。沈思黙考の「坐禅」に呼応するものだそうです。ふと読み留まったのは我が愚脳にも大きな電撃が走ったからなのです。歩きながら自然界に身を委ね、自然界に畏敬の念を抱き、そして自然界に語りかけることのできる自分を見いだすこと。これを「歩禅」と利己的に理解しました。坐禅が苦手な私には「静かに座して己と語る」ことに替わるべく言葉として受容できる気になったのです。だから私には単なる言葉としてではなく、『言霊』(ことだま)となったのです。 平成16(2004)年10月20日 還暦に記す ~以降「散歩日記」を歩禅記として継続発信中~
自己紹介
- 角田明
- 1944年熊本県八代市生まれ。1968年から神奈川県内の高校、中学校の英語教員として勤務。1988年より神奈川県茅ヶ崎市で指導主事、教育研究所長、中学校教頭、指導課長、小学校校長、指導担当参事を務める。1996年8月ちがさき教育実践ゼミナール『響の会』(現・教育実践『響の会』))を開設し、教員の自主研修会として活動を主宰。 2001年に新設開校の茅ヶ崎市立緑が浜小学校・初代校長着任。 2004年3月退職後は「教育実践・響の会」会長として全国で講演活動中。『響の会』は茅ヶ崎市・浜松市・広島市・東京都立川市に開設。2006年9月より2011年8月まで、日本公文教育研究会子育て支援センター顧問として全国で指導助言に務める。著書に 『あせらない あわてない あきらめない』(教育出版)、『人は人によりて人になる』(MOKU出版)、『小学校英語活動教本JUNIOR COLUMBUS』(光村図書出版)がある。その他月刊誌等の執筆原稿や共同執筆書も多数あり。近刊は、2012年10月発行予定(『校長先生が困ったとき開く本』教育開発研究所)。
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