2012/01/03

「子育て」の延長腺上にある喜び

~「里帰り」という風物詩~
 3人の子ども(長女→次女→長男)が順次に家を出て行ってしまってから10年以上の歳月が流れた。それぞれの世帯が出来て、それぞれの家族としてのリズムが出来つつある。5人の孫を中心に、彼らが「親業」に取り組み始めている。他人には言えない悩みも多くなる。辛くて逃げ出したくなることも多い。我が子の将来を案じる親としては複雑な苦悩が発生する。そんな思いに揺さぶられて沈没しそうになることも多い。それが「親業」である。
 教員としても他人に対して「厳しい」人生哲学を要求した。それ以上に「我が子」への要求は厳しかった、と3人が異口同音に発する。衣食住のいずれにも親としての『子育て3原則』を突きつけた。衣・食・住の『衣』は必要以上のお洒落(=流行を追う)には断固として拒否を強制した。『食』では、嫌いなモノは食べない、という我儘は許さなかった。一口でも食することを強いた。泣きがなら食べたことを3人ともハッキリと記憶している。『住』では、「子ども部屋」の独立は必要最低限のプライバシーを護ることは意識したが、「独りだけで」使う環境づくりは拒否した。その実例を挙げる。学習机を買い与えることはしなかった。子ども部屋で「勉強する」利便性は不要だと考えていたからである。高校受験や大学受験でもそれを支援するような学習環境は敢えて作らなかった。それでも、高校やそれ以上の学校までは進級した。学歴が人生を幸せにするとは全く考えていなかった。大学進学を希望した時点で「将来を語る」ことを要求した。上級学校で「何を学び、将来にどう生かすか」の回答を父親として確認したかっただけである。
 結婚相手が内定(笑)したら、必ず両親に紹介することを強制した。3人ともその時点の前段階で母親の耳には通していたようだった。母親としての妻の存在感を実感して嬉しかった記憶も鮮明である。3人と同行するらしい「他人様のお子様」に、父親の口から「よろしくお願いしますよ」と一言だけ伝えたかっただけである。だから、娘たちの選んだ男性が「お嫁にください」との一言を発することはさせなかった。「共に仲良く生きて欲しい」という親心からの思いだけである。
 その後、孫も誕生した。
 お祖父ちゃんになった幸せは筆舌しがたい程の嬉しさであった。孫たちが成長してくると親である娘や息子の成長ぶりが気になって仕方が無い。なぜならば、あいだみつを氏は自らの書に『育てたように子は育つ』と表している。我々が「育てた」子どもたちが、確かな成長を遂げていなければ孫世代が成長しないではないか。親業の当事者時代より、寧ろ「現在」の方が苦しく感じる。なぜならば「親業」に従事している我が子が「育てたように」育っているという事実が付きつけられる怖さがあるからである。
 正月二日の里帰り。
 お年玉もお年賀も不要である。それぞれが、自らの生き方に生き甲斐を持って生きていてくれるだけで言う事は無い。お年玉をあげることも決して惜しくはないが、間違った経済感覚や観念を育ててしまうような「お金」を幼少期に培う必要性もないのではないか。寧ろ、賀詞が問題である。成長に即した年齢相応の「賀詞」が言えない大人にしてしまう方が恐ろしい。
 長男一家と一緒に住んで、嫁いだ娘たち一家を迎えることの醍醐味を実感した。
 老夫婦だけの家に、息子一家や娘一家が「寄り集まる」風景では無いことが妙に嬉しい。古臭い脳細胞だと笑われても小生はこの哲学をこれからも大事にする余生を送ることにする。物理的な問題もあり、この環境が整えられた小生夫婦は幸せなのである。そんな新年始発に弾みが出来そうな予感がする朝である。

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自己紹介

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1944年熊本県八代市生まれ。1968年から神奈川県内の高校、中学校の英語教員として勤務。1988年より神奈川県茅ヶ崎市で指導主事、教育研究所長、中学校教頭、指導課長、小学校校長、指導担当参事を務める。1996年8月ちがさき教育実践ゼミナール『響の会』(現・教育実践『響の会』))を開設し、教員の自主研修会として活動を主宰。 2001年に新設開校の茅ヶ崎市立緑が浜小学校・初代校長着任。 2004年3月退職後は「教育実践・響の会」会長として全国で講演活動中。『響の会』は茅ヶ崎市・浜松市・広島市・東京都立川市に開設。2006年9月より2011年8月まで、日本公文教育研究会子育て支援センター顧問として全国で指導助言に務める。著書に 『あせらない あわてない あきらめない』(教育出版)、『人は人によりて人になる』(MOKU出版)、『小学校英語活動教本JUNIOR COLUMBUS』(光村図書出版)がある。その他月刊誌等の執筆原稿や共同執筆書も多数あり。近刊は、2012年10月発行予定(『校長先生が困ったとき開く本』教育開発研究所)。

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