2013/04/12

行き届いた「情報」提供

                                        ~「欠ける」ことの怖さ~

 「情報過多のひとつだろうなぁ~」、と祖父ちゃんは呟きました。

 事前情報として、事細かに学校から情報が届けられるのが学校文化の現状です。その一つに、月別の予定表(表題は学校独自)があります。長男嫁も、孫たちの学校の月間予定表を、母屋と離れを繋ぐ短い通路の壁に貼ってくれています。祖母ちゃんは毎日それを見ながらおやつの準備をしています。

 昨日も同じように準備して待っていました。予定表の終了時刻より逆算が出来るようになりました。同居して2年間の祖母ちゃんなりの学習成果でしょ(笑)。ところが帰宅時間が大幅に遅れていたようです。折しも大粒の雨が降って来ました。そこで、祖母ちゃんは祖父ちゃんに言いました。「直ぐに車で迎えに行って!」と。

 ちょっと遅すぎるので祖父ちゃんも、「何かあったのかな」ぐらいの思いはありましたが祖母ちゃんの声に押し出されて学校に車で向かいました。ところが、児童の影すら見えません。全学年単学級の統廃合の話題に上る小学校です。児童数が少ないとはいえ月間予定表の下校時刻はとっくに過ぎているのに児童の姿が見えなかったので流石の鈍な祖父ちゃんも路肩に車を止めて自宅に電話をしました。

 知らぬのは祖父母だけ。予定表の誤記は前夜の内に連絡網で知らされた母親は承知していて、出勤の時間に留守番の祖父ちゃん祖母ちゃんに伝言するを忘れたんだろう。祖父ちゃんの勝手な想定でした。

 爺ちゃんが帰宅して様子が分かったので、祖母ちゃんが嫁にメールを入れました。即刻の返信が無いので「知っているんだ」と思いながら待っていました。予定より1時間以上の遅れで孫たちが帰宅してきました。楽しそうに新学期の様子を話しながらおやつを頬張っていました。予定表のミスを「先生がゴメンなさい」と言ってから6時間目の授業を受けたんだよ、と説明をしてくれました。お母さんも知らないよ、と付け加えました。

 祖父ちゃん昔の経験値は活きませんでした(笑)。

 たった1行のミスプリントで、こんな状況下に陥るんだと少々衝撃を受けてしまいました。そして、至れり尽くせりの「情報提供」に馴らされた学校文化の進化に、大きな弱点を発見しました。

 現場の主役である子どもたちの能力育成を軽視して、「保護者あて」の情報提供を優先させていることです。親は、学校の事はわが子に問い質すべきです。子どもは親に説明できないようでは親が叱って当然です。国語や算数等の教科学習の結果だけに一喜一憂している学校教育では、ホンモノの人間性は育ちません。明日の事が不明だったら、当事者である子どもが友達に確認すれば済むことです。

 母親同士が連絡をし合って明日の学校の行事を確認しているのは「学校教育への背信行為」に似た「子ども主体」の教育が侵されていることの証しです。せめて、小学校3年生からは「子どもが伝書鳩」になれるような力量にすべきです。そのために学校と家庭が協力し合うことが必要です。

 小学3年生の孫の、1時間遅れの帰宅時間の「謎を解く」ほどの平穏な時間を過ごしている祖父ちゃんだと苦笑してしまいました。教育は学校の姿勢(体制)に懸かることを再確認している朝です。

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自己紹介

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1944年熊本県八代市生まれ。1968年から神奈川県内の高校、中学校の英語教員として勤務。1988年より神奈川県茅ヶ崎市で指導主事、教育研究所長、中学校教頭、指導課長、小学校校長、指導担当参事を務める。1996年8月ちがさき教育実践ゼミナール『響の会』(現・教育実践『響の会』))を開設し、教員の自主研修会として活動を主宰。 2001年に新設開校の茅ヶ崎市立緑が浜小学校・初代校長着任。 2004年3月退職後は「教育実践・響の会」会長として全国で講演活動中。『響の会』は茅ヶ崎市・浜松市・広島市・東京都立川市に開設。2006年9月より2011年8月まで、日本公文教育研究会子育て支援センター顧問として全国で指導助言に務める。著書に 『あせらない あわてない あきらめない』(教育出版)、『人は人によりて人になる』(MOKU出版)、『小学校英語活動教本JUNIOR COLUMBUS』(光村図書出版)がある。その他月刊誌等の執筆原稿や共同執筆書も多数あり。近刊は、2012年10月発行予定(『校長先生が困ったとき開く本』教育開発研究所)。

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